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マイルスがよく演奏した楽曲の中から、6曲が演奏されていて、『バイバイブラックバード』はその1曲目に収められている。更に1曲キースのオリジナル『For Miles』が真ん中に挿入されているという構成だ。そして、更に最後に、1曲目の『バイバイブラックバード』のエンディングの別バージョンがおまけのように収められている。よく知られたスタンダードとしては、セロニアス・モンクの『ストレート・ノー・チェイサー』や、コルトレーンの演奏でも知られる『アイ・ソート・アバウト・ユー』などがある。マイルスはモンクとは、ライブ中にひともめしたことで有名な話になっているが、コルトレーンは、コルトレーンが独自の探求の道を歩む前に、マイルスはモードのスタイルを確立するために、組んでいる。キース・ジャレットと言っているが、これは、トリオの演奏で、Bassにゲイリー・ピーコック、Dsにジャック・ディジョネットを含む三人の絶妙なインプロビゼーションを含むプレイで成り立っている。
今、このアルバムを改めて聴いていると(といっても、いつか引っ張り出してきて積んである中から、先のマイルス関連で聴きたくなって、ここ二、三日聴いているんだけど)、三人の演奏もさることながら、歌うキースがやけに目立って聴こえてくる気がする。この場合、歌うというのは、歌を歌っているわけではなくて、ジャズミュージシャンがインプロビゼーションをとるときに(ピアニストやビブラフォン等、管は歌えないからね、だって吹いているから)、思わず演奏と同時進行で、口ずさむ即興のメロディのことである。それが、キース・ジャレットのマイルスへの敬慕の表れだという気がするのである。勿論、一曲一曲にその思いは込められているが、そういう感情を感じるのである。キースは自分の音楽としてマイルスを演奏しているが、このトリオはアコスティックであって、変革(ロックとの融合)以前のマイルスをやっている。この『バイバイブラックバード』は実にリズミカルで躍動感もグルーブ感もあり、好きな演奏である。そして、後テーマが来ても終わらない。逆循環コードで、マイルスがバップ時代に好んで使ったエンディングをとっているということである。この演奏は永遠に終わらないとでもいうように・・・。
『For Miles』は、三人がマイルスに捧げる曲として作った曲である。マイルスが打ち出した(ロック融合以前から、常にマイルスは変革し続けてきたわけであるけれども、マイルス曰く、「いつだって、そうだけど、どの時代にも、その時代特有のスタイルがあって、バードとディズがいくら素晴らしいと言ったって、一つの時代のスタイルでしかない。」)、モードの手法で作られた楽曲である。マイルスは、ビバップからジャズを解放し、クールジャズの手法を提唱し、表現の幅を広げ、更に、モードのスタイルを提唱し、音階から音を紡ぎ出していくというような、遥かにどんな表現も可能(ビバップに比べたら)というようにジャズをさらに開放していく。そらならなんでもかんでも、いいのかということではない。それだとへなちょこでジャズだかなんだかわけわからないような音楽が出来上がってしまうし、フリーにいった時のジャズがまさにそれにちかいものあると思う(勿論、フリーはジャズが開放されきった状態で、へなちょことは言わないが、マイルスはそこへは決していかない)。マイルスはそのモードも、先にコルトレーンと言ったが、類稀れな才能を持つミュージシャン同志の自分の音をも超えていくような互いの音の絡み合いの演奏のなかで、マイルスの制約(アイデア)のもと、生み出されたというような、いわば、マイルスのスタイルの中で生み出された手法ということになると思う。
話をもとに戻すと、この『For Miles』は、アフリカンタッチのパーカッションで始まり、曲自体は、東洋的というより、中東的なイメージを持つ。こういう曲はモード手法無しではジャズにおいては作り得ない。マイルスのモード導入の代表的なアルバムは、『マイルストーン』や『カインド・オブ・ブルー』が挙げられると思う。しかし、実は、特に後者に関しては、マイルス自身は、美しいアルバムができたが、自分が作りたいものとは違うものができてしまったと言っている。おそらくマイルスが作りたかったものは、西洋的要素の少ない、アフリカ的か、東洋的なもので、アフリカンバレエにヒントを得た、かなりリズミカルで、フィンガータッチのピアノを含んだものだったはずである。そのマイルスがやりたかったであろう演奏を、キースはまさにここで実現しているのである。『カインド・オブ・ブルー』以後、更に変革に次ぐ変革を重ねて、ラップとも融合し、マイルスが逝った1991年にである。
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